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初めての子供向け電子工作教室をMakersシェムリアップで開催しました。その内容と様子をご紹介します。

LEDキャンドルを上と下から撮った画像
LEDキャンドル

子どもたちが挑戦したプロジェクトはLEDキャンドルです。ATtiny13aというマイクロコンピュータを使ったプロジェクトです。設計自体は簡単ですが、作るのはなかなか難しいです。教室で学ぶのは2つ、様々なノイズを理解すること、そしてはんだ付けです。 はんだ付けが授業の山場です。

ピンクノイズ (1/fゆらぎ)

ピンクノイズ(日本語では1/fゆらぎ)は、ひとが快適に感じるノイズです。ピンクノイズは身近なノイズです。川のせせらぎの音、風の音、神経細胞の活動、これらはすべてピンクノイズを含んでいます。純粋にランダムなノイズ(ホワイトノイズ)と異なり、ピンクノイズの周波数には特定の傾向が見られます。ピンクノイズは様々な場面で利用されています。例えば、最近の扇風機には不規則なリズムで風量を変えるボタンがありますし、音楽配信サービスには、リラックスしたり心地よく眠りにつくための川のせせらぎや波の音などの自然の音がありますし、製品化されたLEDキャンドルは「炎のゆらぎ」 を再現します。設計したLEDキャンドルは、簡単な数式を使った疑似ピンクノイズを使って炎のゆらぎを再現しています。生徒はホワイトノイズとピンクノイズの違いを実際に見て理解します。

はんだ付け

はんだ付けをし始めてからずいぶん経ちますが、私ははんだ付けが上手とはとても言えません。「はんだ付けは子供にとって難しすぎる」というひともいるかもしれません。 けれど、はんだ付けは誰にとっても簡単ではありません。基板には、安価で切りやすい紙製のユニバーサル基板を使いました。下の動画(英語)では、はんだ付けの基本とよくある失敗を説明しています。

部品は、LEDひとつ、2つの3Dオブジェクト(炎とキャンドル)、抵抗、電源スイッチ、ケ ーブル、そしてコインセルバッテリーホルダーです。回路は非常にシンプルなもので、 最初の電子工作回路として有名な 「ブリンク」回路 そのものです。ですが、基板上に信号線を取り回すのはちょっとむずかしすぎたかもしれません。信号線があらかじめ印刷された専用の基板を作成すべきでした。そうすれば生徒は部品のはんだ付けに集中することができたでしょう。生徒ははんだ付けの基本と 「予備はんだ」と呼ばれる技術を学びました。この国ではしばしば無視される「安全対策」ですが、作業中に生徒は保護メガネを着用します。幸いなことに、誰もやけどはしませんでした。これで生徒たちは「はんだ付けをしたことがある」と胸を張って言えるようになりました。

人生で初めてのはんだ付けをする子どもたち
人生で初めてのはんだ付けをする子どもたち

参加者の親御さんとお話していて、現代的な教育プログラムのニーズがあることがわかりました。シェムリアップにもインターナショナルスクールはいくつかありますが、そうした恵まれた環境と教育プログラムがある学校でも、こうしたSTEM(科学・技術・工学・数学の頭文字)教育プログラムはありません。

事前に想定していた時間をだいぶ超過しましたが、全員がLEDキャンドルを完成させました。回路を作るにあたっての最後の儀式は、電源投入です。希望と不安の入り混じる瞬間です。正しく実装するのに多くの努力をはらい、その努力が十分だったかを確かめる瞬間です。努力が足りないと、ショートで発生する「魔法の煙」を目にするか、何も動かないかのどちらかを目にします。幸いなことに、全員が「動いた!」と叫びました。 技術者なら誰でも好きなセリフです。LEDは幸せそうに揺らいでいました。

授業の教訓

ユニバーサル基板の代わりに、部品の位置関係も印刷されたPCB基板をデザインすべきでした。そうすれば生徒ははんだ付けに集中できます、また、授業時間も短くなるでしょう。

事前の周知は十分ではありませんでした、用意できるリソースが限られていたため、参加できない家族もいました。次回は、特段の監督を必要としない別のアクティビティを用意し、多くのひとが楽しめるようにします。すでにいくつかのアイデアはあるのですが、当日はこの授業にかかりきりでできませんでした。参加できなかった方々にはここでお詫び申し上げます。

授業で使用したLEDキャンドルプロジェクト

LEDキャンドルの回路図

LEDキャンドルの回路図や3DオブジェクトはGitHubに公開しています( trombik/kicad-led-candle )。

プログラム( main.c )はArduinoで書かれていますが、Arduino固有の関数はほとんど使っていませんので、C だけに置き換えるのは容易です。Cプリプロセッサ変数でピンクノイズをホワイトノイズに変えて、その違いを観察することもできます。

終わりに

授業はうまくできたこともありましたが、そうでなかった部分もありました。今後、改善しようと思います。こうした授業に興味のある方は、Telegramで事前にご連絡ください。ユーザ名は @mkrsgh です、参加には保護者も必要です。Makers シェムリアップはいつでもオープンしています。お立ち寄りの際には、お子様と親御さんがここで何ができるのかをご説明します。事前にご連絡いただければ、週末の10:00から14:00までは、子供(と大人)向けの教室に参加できます。場所は国道6号線とワットボー通りの近く、 Babel Guesthouse の隣です。もし特定の興味の対象があれば事前にお知らせください。ユニークな体験をお約束します。


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